高齢化社会を支える介護人材難 介護助手の導入で介護の人手不足は解消されるのか?
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日本では高齢者の割合がますます高くなっています。
65歳以上の老年人口が21%を超えた社会を「超高齢社会」と言います。
日本は、昨年には老年人口がなんと26.7%となり、過去最高を記録しています。
しかも今後はますます高齢化率が高くなっていきます。
そんな中、問題になっているのが介護の人手不足です。
高齢化社会を下支えする肝心の介護人材が不足しているのです。しかも相当深刻なほど介護職のなり手が少ないのです。
政府もいろいろ対策を講じているのですが、一部の自治体で「介護助手」を導入することで、人材不足を補い、しかも他の社会問題も解決しようという動きが出てきています。
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介護の有効求人倍率の衝撃
有効求人倍率とは、求職者1人あたりに何件の求人があるかを示した指標です。
完全失業率ともに、現在の雇用情勢をみるにはとても重要な指標になります。
過去の不景気で、有効求人倍率が低く就職や転職をするのに苦労した経験のある人は、この数字の重みもよく分かるのではないでしょうか。
現在は景気が回復し、2017年1月の有効求人倍率は1.43倍になっています。
つまり、求職者1人あたりに1.43件の求人があるわけですから、選ばなければ仕事があるという状況になっています。
この有効求人倍率ですが、介護の仕事に関するだけのデータになるともっと数値が変わってきます。
昨年11月のデータになりますが、全職種平均の1.31倍であった有効求人倍率が介護だけに限れば、なんと3.40倍という数値に。
凄いですね。求職者1人につき3件以上の求人がわるわけですから、まさに選びたい放題とも言える状況です。
逆に介護事業者にとっては、深刻な人手不足という状況になっています。
外国人介護士や介護現場で外国人研修制度を活用できるようになったりと、対策はとってはいるのですが、状況はますます悪くなります。
介護の現場は景気に連動するようで、一昔前の就職難の時代はそれほど人手不足は深刻ではなかったようです。
介護の人手不足の原因は?
介護の人手不足の大きな原因は、介護の仕事が3K、つまり「きつい」・「きたない」・「きけん」という認識があるのが大きいでしょう。
たしかに介護によって腰などの身体を壊したり、人の汚物処理はできればやりたくないでしょう。
また、感染症によるリスクも高いのでやはり3Kと思われても仕方がないのかもしれません。
ただそれ以上にイメージするのが、介護職の収入の少なさではないかと思います。
実際に厳しい仕事に比べて、その給料はあまり高くないと言わざるをえません。
介護の国家資格があっても将来は不安
介護の収入の少なさの原因となっているのが、介護自体が専門職として扱われていないという現状があります。
例えば介護と似た医療の現場では、医師はもちろんのこと、看護師の給与水準も過去比べて改善をしました。
その他の医療に関わる職種も、その専門職性が認められるものに関しては、決して悪くない給与水準になっています。
ところが、介護の世界では、専門家としての「介護福祉士」または「社会福祉士」のような国家資格はあります。
しかし、たとえ国家資格を有していても、無資格者やもっと簡単に取れる有資格者と同じような仕事をしているのが今の状況です。
多少給料の差はあるものの、それでも時給+100円だったりでそれほどの違いはありません。
また、無資格者と同じような仕事をすることで、学んだ専門知識を生かせず、将来の不安もあってか、特に若い人たちが目指そうという職業になりにくくなっています。
介護助手導入という試み
そんな介護人材の不足の抜本的な解決策のヒントになるかもしれないのが、「介護助手」の導入です。
三重県老人保健福祉協会は、地域の元気な高齢者(60~75歳くらい)を「介護助手」として導入することによって、「人手不足の解消」と「介護職員の“専門職化”」を目指しています。
つまり、比較的簡単な無資格者でもできるような仕事は介護助手が行い、専門性が要求される仕事は介護福祉士などの有資格者が行うという取り組みです。
専門性が生かせるのなら、それだけ給料が上がるチャンスにもなるでしょうし、何よりも学んだことを生かせることでその将来性は感じるようになるでしょう。
また、介護の人材不足を解消するためよりも、もっと副次的な効果が期待できます。
それは、「高齢者の就労先を拡大」することと、「高齢者の介護予防」となる可能性があるからです。
日本の年金財政はますます厳しくなり、将来年金がどんどん少なくなるのはほぼ確実です。
65歳以上を高齢者として年金が支給されるシステムも将来は70歳や75歳以上になるかもしれません。
そうなると重要なのが、高齢者の就労先の拡大です。元気な高齢者が介護助手として活躍してくれれば、介護の人手不足と高齢者の就労先拡大という一粒で二度美味しい効果が期待されます。
また、元気な高齢者が介護助手で体を動かすことで、その人たちの介護予防にもなります。
高齢者率が高まっても、介護予防によって、要介護者が増えなければ介護保険の財政がますます厳しくなるという予想も少し変えられるかもしれません。
そうなれば、介護職にその利益の配分をするという流れができる可能性があります。